EUR/USD: 市場は連邦準備制度理事会の利下げ予想
● 2023年の最後の週にEUR/USD のグローバルな予想をお伝えしました。今回は、長期的な予想ではなく、NordFX分析グループが10年以上続けている通常の週間予想になります。
先週の大きなイベントは、紛れもなく米国のインフレ統計でした。1月11日(木)に発表された数字によると、消費者物価指数(CPI)は、コンセンサス予想の3.2%と前回の3.1%に対して前年比3.4%の上昇でした。月ベースでも消費者物価指数は上昇、予想の0.2% と前回の0.1%に対して0.3%でした。 その一方、食料とエネルギーを除くコアCPIは、前回の4.0%に対して3.9%に下落しました (前年比)。
● FRBのジェローム・パウエル議長が12月の記者会見でハト派的であったため、以前のような断固としたインフレ抑制をしないような印象を与えました。これは、米国金融当局が現在、より柔軟にこの指標に対応していくことを示唆しています。そのため、さまざまなCPIデータは市場関係者にFRBが2024年第1四半期の終わりまでに政策緩和をはじめるという確信を与えました。CME Fedwatchによると、3月に25ベーシスポイントの利下げが実施される可能性は、統計発表前の61%から68%に上がりました。一方、オランダの最大手銀行のINGのストラテジストは、第2四半期の終わりの大幅なドル安を予想しています:この時、 EUR/USD は1.1500の上昇予想です。それまでの為替市場は、かなり不安定のままとなるでしょう。
● ユーロ圏については、1月8日(月)に発表された統計が消費者市場の状況の暗さを示しましたが、予想ほどではありませんでした。小売売上は、前年比-1.1%の減少となりました。この数字は、前回の-0.8%より大きくなっていますが、予想の-1.5%よりはかなり下回りました。
こうした状況での欧州中央銀行(ECB)のイザベル・シュナーベル専務理事の発言は、かなりタカ派的でした。専務理事は、労働市場は安定しているものの、ユーロ圏の景況感指標は最低水準とした見方を示しました。また、ユーロ圏経済のソフトランディングと2024年末までにインフレ目標を2.0%に戻す可能性も否定しませんでした。シュナーベル専務理事によれば、まだ、達成可能であるものの、そのためには、ECB が高い金利を維持する必要があります。ユーロ圏当局のタカ派的立場と対照的な米国のハト派的発言により、 EUR/USD は1.0900を下げることはありませんでした。
● 先週の取引最終日の1月12日(金)に発表された米国の鉱工業インフレ率に関するデータも下落となりましたが、相場には大きく影響しませんでした。生産者物価指数(PPI)は前年同月比1.8%(予想1.9%、前回値2.0%)、月次PPIは11月と同じく-0.1%(予想+0.1%)となりました。
このデータの発表後、EUR/USD は、1.0950で今週の取引を終えました。
現在のこのペアの直近の見通しについては、アナリストの意見は二つに分かれているため、方向性は明らかではありません: 50% がドル高、50%がユーロ高です。 テクニカル分析もかなり中立です。D1のトレンド系では、赤と緑の比率は、50%対50%です。オシレーター系では、25%が緑 、35% がグレー、残りの40%が赤ですが、このうち4分の1が売られ過ぎを示しています。 直近のサポートは、1.0890-1.0925に続いて、1.0865、1.0725-1.0740、1.0620-1.0640、1.0500-1.0515、1.0450となります。強気筋は、1.0985-1.1015, 1.1185-1.1140, 1.1230-1.1275、1.1350、 1.1475でレジスタンスに直面するでしょう。
● 来週の注目の経済イベントには、1月16日(火)のドイツ、17日(水)のユーロ圏の消費者物価指数(CPI)の発表があります。水曜日は、米国の小売市場に関する統計発表があります。1月18日(木)は、恒例の米国の新規失業保険申請件数の発表があります。同日に、フィラデルフィア連銀の製造業の景況感が明らかになり、金曜日はミシガン大学の消費者信頼感指数が発表されます。なお、1月15日はマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの日で米国の祝日となります。
GBP/USD: ポンド上昇の可能性を維持
● 年末年始前のGBP/USD は、2023 年 8 月以来の高値水準である1.2827を つけました。そして、高値から安値まで200ポイント以上下げてから反発しました。この予想の執筆時点では、堅調な上昇トレンドに戻ったとは確信することはできません。この4週間の推移は横ばい傾向と解釈できます。同じようなパターン、具体的には1.2600-1.2800 圏内が8月にもありました。その時は、下落が勢いづく前の小休止に過ぎませんでした。現在も同じような状況を目にしていますが、マイナスではなく、プラスとなる可能性があります。この場合なら、GBP/USDは第1四半期中に1.3000-1.3150となる可能性があります。
● 先週のイギリスポンドは、米国のインフレデータとFRBのハト派的方針変更への見通しから大幅に上昇しました。イギリス国家統計局 (ONS) が1月12日(金)の発表で11月のイギリスのGDPが予想の0.2%増と10月の0.3%減に対して前月比0.3%増と報告したこともポンドを助けました。また、11月の製造業生産高は前月比0.4%増(予想0.3%増、前回-1.2%減)でした。FTSE 100 種総合株価指数も市場の楽観ムードと市場関係者のリスク選好に反映して0.8%の上昇となりました。
● GBP/USD の先週の終値は1.2753でした。スコシアバンクのエコノミストは、ポンドの強気筋の勢いを維持するには 、1.2800-1.2820 圏内のレジスタンスを確実に突破する必要があるといいます。そして、"しかし"と続け、" 1.2800 圏内を抜けなかったので、[市場関係者]は疲れはじめているかもしれないし、また、先月の値動きは弱気の可能性を示したままである"とあります。
ポンドは中期的には上昇の可能性を残したままですが、アナリストの今後数日の予想ではドルに傾いています。アナリストの60% は、このペアの下落、25%が上昇 支持、そして残りの15%が中立の立場です。アナリストとは対照的に指標は、ほぼすべてがポンドを支持しています: D1のオシレーター系では、90%がポンド支持 (10%が中立)、トレンド系では100%が上向きです。 下落の場合、サポートレベルは、1.2720、1.2650、1.2600-1.2610、 1.2500-1.2515、1.2450、 1.2330、1.2210、1.2070-1.2085となるでしょう。上昇の場合、レジスタンスは、1.2785-1.2820、1.2940、1.3000、1.3140-1.3150です。
● 来週の注目材料には、1月16日(火)の一連のイギリス労働市場データの発表があります。消費者物価指数 (CPI)は1月17 日(水)、イギリスの小売売上高は1月19日(金)に発表されます。
USD/JPY: 米国CPI が日本のCPIを上回る
● 日本銀行(日銀)は、1月23日に発表予定の四半期報告書で、2024年度のインフレ見通しを2%台半ばに引き下げることを検討しています。このニュースは、ロイターから引用して時事通信が1月11日(木)に報じたものです。日本の実質賃金は3.0%減となりました。賃金上昇率が急に伸び悩んだため、東京の消費者物価指数 (CPI) は予測を下回り、2.7%から2.4%に下がりました。これらのデータから、アナリストたちは日本銀行が超緩和的金融政策の引き締めを遅らせるのではないかとした推測を始めています。この理屈から、投資家はUSD/JPYのロングポジションを取ることをアドバイスされました。
しかし、1月11日の高値146.41 の後に、このペアは反転して下落を始めました: 市場関係者にとっては、日本のインフレ率の低下よりも米国のインフレ率の低下の方がはるかに重要だったのです。円の金利がマイナス水準の-0.1%であることは、それほど重要ではありません。ドルの金利がじきに0.25%に下がることの方が、はるかに重要ということです。
● 経済協力開発機構(OECD)のマティアス・コーマン事務総長は最近、"日本銀行は、金融引き締め策のレベルをより検討する機会にある " と述べました。しかし、既にこのような曖昧な発言は何度も聞いてきました。私たちの意見としては、フランスの銀行ソシエテ・ジェネラルのエコノミストによる現在の状況のテクニカル分析の方に大きな関心があります。
同行は、USD/JPY が先月末に140.20付近の中間的安値の後、急に反転したと書いています。200日移動平均線(200-DMA)に戻り、中間のレジスタンス圏内の10月の安値146.60-147.40に近づいています。1月11日(木)に146.41レベルの50日移動平均線突破に失敗した後、下げており、下げ始めたことを示しました。"このペアが143.40付近の200DMAを維持できるかどうかに注目したい。維持できなければ、140.20-139.60に向けてのさらなる下落リスクを意味することになる。反発[上昇]の継続には146.60-147.40 の突破しなければならない" というのがソシエテ・ジェネラルの見方です。
● USD/JPY の終値は144.90でした(興味深いことに、現在の推移が前回のレビューでお伝えした波動理論に一致)。直近では、アナリストの40% が円高予想、40% がドル高予想、20% が中立の立場です。D1のトレンド系では、60%が上昇の一方で、残りの 40%が下落を示しています。オシレーター系では、70%が緑 (15% が買われ過ぎ圏内)、15%が赤、残り15% がグレーです。直近のサポートは、143.75-144.05で、142.20, 141.50、140.25-140.60、138.75-139.05、137.25-137.50、 136.00と続きます。レジスタンスは、145.30、146.00、146.90、147.50、148.40、149.80-150.00、150.80、 151.70-151.90となります。
●来週は、日本経済に関する重要なイベントの予定はありません。
暗号資産: X デイは到来。次は、どうなる?
● 多くの人々が、長い間、話題にしていた夢が遂に現実となりました。予想どおり、1月10日に米国証券取引委員会(SEC)は、ビットコインのスポット上場投資信託(ETF)の立ち上げを一括承認しました。これを受けて、グレイスケールのETF、ビットワイズおよびハッシュデックスのETFがNYSEアルカ証券取引所で承認されました。ブラックロックとヴァルキリーのファンドはナスダックで開始されます。CBOEはVanEck、Wisdom Tree、Fidelity、Franklin TempletonのETF、ARK Invest/21 SharesとInvesco/Galaxyの共同ファンドを受け入れます。
予想に反して、承認直後のBTC/USDのレートは、歓喜に沸くどころか、$47,652までの上昇でした。 このように反応が薄かったのは、市場が既にこれについて相場に織り込み済みだったからです。また、前日にハッカーがソーシャルネットワークのX(旧Twitter)のSECのアカウントに侵入して、長い間待ちわびていたBTC-ETF 承認についての偽のツィートを投稿したからです。その後、市場は、この偽の投稿に反応して、ビットコインは$48,000台に上昇しました。 偽の投稿であると判明した後、反落、前日の推移を繰り返すに過ぎませんでした。
● SECが申請の承認決定を特に喜んでいなかったことに注意が必要です。2013年にウィンクルボス兄弟(キャメロン・ウィンクルボス&タイラー・ウィンクルボス)がスポットETFの最初の承認申請をしましたが、2017年に却下されました。 それから、6年ほど経過しましたが、暗号資産に対する規制当局の嫌悪感は相変わらずで、今回の承認は、やや不本意かつ圧力の中でのものでした。ゲイリー・ゲンスラー委員長のプレスリリースによると、委員会の決定はスポットETFに関するグレイスケールの訴訟に関する裁判所の判決に基づいています。裁判所は、SECが“拒否理由が不十分である”とグレイスケールに有利な判決を下しました。その後、似たような商品の承認を遅らせることはもはや妥当ではなくなりました。
しかし、1月10日、ゲンスラー委員長は自身の否定的な意見を抑えることはしませんでした。委員長は、"スポットBTC-ETFの承認にかかわらず"、プレスリリースで "ビットコインを支持するわけでなない。投資家はビットコインやその価値に付随する暗号資産の数々のリスクに注意しなければならない。特に、ビットコインは投機的な不安定な資産で、ランサムウェア、マネーロンダリング、制裁回避、テロ資金供与などの不正利用にも使われている。今日、特定のETPスポット・ビットコイン株の上場と取引を承認したが、ビットコインを認めたわけではない" とまとめ、デジタル資産との戦いが終了していないことを明らかにしました。
● 短期的な見通しとして、多くのアナリストは大幅な上昇を期待せずに、重要なレジスタンスとして$48,500を挙げていました。 その通りでした : 9月11日にBTC/USD がこの水準を突破した後、"売りのニュース" – 買い注文が大幅に終了して利確されました。そのため、価格は急落しました。コイングラスによると、暗号資産の決済された総額は約2億900万ドルにもなりました。
スポットビットコインETFの立ち上げによる長期的な影響をすべて評価するには時間が必要です。取引所での運用開始まで1週間程度必要で、投資量のデータは2月中旬頃になる見込みです。ほかのETF商品と比較するなら、この2年間で約1.2兆ドルが投資されています。2004年に現物の金のETFが開始されて7年後には、4倍の価格となり、現在は1,000 億ドル以上です。
デジタルゴールドについて、スタンダード・チャータード銀行のアナリストは、ビットコインが受け入れられるためにビットコインETFの承認の瞬間は極めて重要であるとした見方です。"ビットコインは金との連動商品と同じように上昇していくことになるだろう。しかし、これは金のように7年から8年かけてでなく、暗号資産市場の著しい成長を考慮すると、より短い期間、1、2年で成し遂げることになる"と述べています。スタンダード・チャータードの予想では、2025年末までに、ビットコインは$200,000 になる見込みです。2024年末までに、ETFは437,000 BTC から132万BTCを保有することになり、これは500億ドルから1000億ドルに相当で、ビットコインにかなりの価格変動を引き起こす可能性があります。
ベンチャー投資家のチャマス・パリハピティヤ氏も同様の意見です。同氏は、2024年はビットコインにとって歴史的な年になると考えています。多くのスポット上場ETFの承認が、"BTCに革命を起こす" 可能性が大きく、BTCの普及につながる見通しであることを強調しています。同氏は、このようなシナリオでは、ビットコインが2024年末までに従来の金融用語での定番になると主張していました。
● コインデスクのデータでは、デジタルゴールドとナスダック100テクノロジー指数との40日間の相関がゼロに下がりました。この4年間、この価格相関は中程度(0.15)から強(0.8)まで変動しながらプラスで変動して、2022年の弱気市場ではピークとなりました。現在、ビットコインは完全にナスダックとは、"切り離れています"。この相関関係のリセットは、ビットコインが投資ポートフォリオの魅力的な分散ツールとしての可能性を示し、ビットコインの価値を示しているのかもしれません。
マクロストラテジストのヘンリック・ゼバーグ氏も、2024年に驚異的な強気相場になると見込んでいます。同氏は新たな参入者により、今年のデジタル資産の動きは"放物線状" になると予想しています。"[ビットコイン] は、絶対に爆上がりする– 垂直な上昇だろう。最低でも$115,000になると思う。これは保守的な予想。 $150,000 レベルや$250,000の可能性もあり得る" とゼバーグ氏は述べています。
ゼバーグ氏は、スポットビットコインETF の承認により、機関投資家や従来の投資家の参入により、2024年の最初の4ヵ月は、暗号資産市場にとって"信じられないほど、素晴らしい" ものになる可能性があるとも付け加えました。第1、第2の強気サイクルに乗り遅れた人々は、"ああ、最初の2回は乗り遅れたが、今回は乗り遅れないだろう "と言うでしょう。しかし、同氏は従来の市場は、米国の大恐慌である"1929年以来の最悪の暴落" に直面しているとした見方をしています。
PlanBとして知られる著名なアナリストは、ビットコインの価格がまもなく10万ドルから100万ドルに達する可能性があると見込んでいますBTCの現在の普及率は2-3%に過ぎないため、ビットコインの下落は予想できないと説明しています。S-字のロジスティクス曲線とメトカーフの法則によれば、普及率が50%以下では資産の収益性の低下は期待できないはずです。つまり、こちらのアナリストの意見では、"ビットコインは、あと、数年は指数関数的に上昇する"ということです。
● 実際は、楽観的な見方をする人と同じように、下落予想をしている人も多くいます。2週間前の特集:" 2024年予想:ビットコインの昨日、明日、明後日 " では、その見解の一部をお伝えしました。現在、テレビ司会者でヘッジファンドCramer & Co.の創設者であるジム・クレイマー氏の最近の発言が注目されています。ビットコインはピークであり、さらなる上昇を期待すべきではないとした見方です。これは、ビットコインが$47,000台を突破した時に発言されました。ビットコインの1月11-12日の動きを見る限り、"ジム・クレイマーは正しいのか?"という疑問が湧いてきます。
このレビュー執筆時の1月12日のBTC/USD は、かなり下落して$43,000前後での取引です。暗号資産時価総額は $1.70兆ドルで、1週間前の $1.67 兆ドルより増加しています。ビットコイン恐怖&貪欲指数は、72 から 71ポイントに下がり、 貪欲圏内のままです。
● ビットコインの動きとは対照的で、先週のイーサリアムは素晴らしい上昇でした。1月10日に$2,334でスタートした ETH/USD は、1月12日に$2,711 の先週の高値をつけ、16%の上昇を示しました。興味深いことに、この急騰はSEC の前向きな決定がビットコインを基にした上場商品に限定されることを強調した発表後に起きたころです。ゲーリー・ゲンスラー委員長は、この決定が"証券である暗号資産の上場基準を承認する準備が整ったことを示すものではない" ことを明らかにしました。規制当局が、ビットコインのみを商品としてみなしている一方で、"圧倒的多数の暗号資産を投資契約(すなわち証券)とみなしている" ことに注目です。つまり、イーサリアムなどのアルトコインのスポットETFの登場は間近であるというのは根拠のない期待になります。
しかし、こうしたかなり厳しい状況にもかかわらず、ETHは急に高騰しました。市場の反応は本当に予測不能です。ただ、1月12日(金)の終わりに向けて、イーサリアムはビットコインに続いて下落、$2,500圏内で土曜日を迎えました。
NordFX Analytical Group
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