2022年12月12日‐16日のFXと暗号資産(仮想通貨)の予想

EUR/USD: FRBECBの会合を控え

  • 来週は、2つの重要なイベントが予定されています。まず、一つは、12月14日(水)に開催される米連邦準備制度理事会のFOMC(連邦公開市場委員会)会合です。現在のドルの政策金利が4.00% で、FRBのジェローム・パウエル議長が利上げペースを12月に減速させることを11月30日に認めていたことを振り返ってみましょう。議長の発言で市場関係者は12月の利上げが75ベーシスポイント(bp)ではなく50 bpにとどまると確信しました。実際は、12月14日に2023年の政府の意向が決まるでしょう。当然ですが、ここで重要なのは金利決定そのものだけでなく、FOMCの経済予想と会合後にあるこの組織の記者会見です。

    米国のインフレデーターが委員会のメンバーの意思決定に影響する可能性が高いと考えられいます: 11月の消費者物価指数 (CPI) は、会合の前日の12月13日(火)に発表されます。

    二つ目のイベントは、12月15日(木)のECBの会合です。ユーロの金利は、現在、2.00% ですが、予想によると、ヨーロッパ政府もまた、50 bp引き上げ、米ドルに対してリードすることになります: 2.50%に対して4.50%。 FRBと同様、今回の会合後に発表されるECBのコメントや予想も市場参加者に重要になります。

    先週についてですが、DXYドルインデックスは、9月末以降からの損失の少なくとも一部を取り戻すことはありませんでした。今回は、中国の統計が足かせとなりました。その一方で、中国製造部門は減少を続けています: 生産者物価指数(PPI) は、2ヶ月連続で1.3% に下げています。また、インフレ率が減速しています: 1月の消費者物価指数(CPI)は前月 の2.1%に対し1.6%となりました。この状況で中国政府は経済を支えるために金融緩和政策(QE) へ舵を切りました。ブルームバーグの調査では、市場は中国人民銀行が早ければ2023年第1四半期に利下げをすると予想しています。これを背景に、アジアを中心とした株式指数は上昇してドルは下落しました。中国の厳しいCOVID-19の規制緩和に対する楽観的な見方もまた、株式市場のプラス傾向を支えました。

    米国の通貨にさらなる圧力をかけたのは、米国の労働市場に関する統計でした。12月8日(木)に失業保険の新規申請件数が明らかになりました。この数字は、22万6千件から23万件へとわずかに増加で完全に予測通りとなりました。しかし、再申請件数は、この10カ月で最多です: 167万1千件は、FRBに経済課題を示すものでもあります。

    これに対して、ヨーロッパのマクロ統計は良好に見えます。つまり、第3四半期のユーロ圏のGDPは、前期比0.2%に対して0.3%、前年同期比2.1%に対して2.3%と予想を上回りました。

    その結果、EUR/USD は、大きな調整をせずに、12月7日に1.0442の安値をつけ、12月9日には、 1.0587水準まで上昇しました。生産者指数 (PPI) とミシガン大学消費者信頼感指数が週終わりに小幅調整をした後、このペアは1.0531で終えました。

    アナリストの50% は、このペアのさらなる上昇、25% が下落を予想しています。残りの25%のアナリストが中立予想です。ここで注目すべきは、中期予測になると、このペアがパリティレベルの1.0000を下回る急落の弱気予想が75%に増えることです。

    D1のオシレーター系では異なります。オシレーター系のすべて100% が緑で、そのうち10%が買われ過ぎ圏内です。 トレンド系でも、100% 、緑が多くなっています。

    EUR/USD の当面のサポートは、1.0500 台、その後は、1.0440、 1.0375-1.0400、 1.0280-1.0315、1.0220-1.0255、 1.0130, 1.0070、そして 0.9950-1.0010。強気筋は、1.0545-1.0560、1.0595-1.0620、1.0745-1.0775、 1.0865, 1.0935でレジスタンスに直面するでしょう。

    上記のほかにも、来週は重要なマクロ統計があります。12月13日(火)にドイツの消費者物価指数と景況感指数(ZEW) が発表されます。また、12月16日(金)にドイツとユーロ圏の製造業購買担当者指数 (PMI)と11月のユーロ圏消費者物価指数が明らかになります。

GBP/USD: イングランド銀行の会合を控えて

  • 12月15日(木)はECBだけでなくイングランド銀行(英銀)でも金利決定があります。イギリス政府が、FRBに続いてG10 諸国の中で量的緩和政策(QE)を最初に踏み切った銀行の一つであることに注目する必要があります。11月にポンドは、75 bpsの利上げをしました。しかし、ECB とFRBと同じく、12月は50 bp の利上げにとどまり、そして、 3.50%となるでしょう。ロイターの調査では、エコノミストの96% がこれに同意しています。4%だけが75 bpを主張しています。

    回答者の多くは、リセッションが長期的で傷が浅いものになるとした見方です。予想では、2022年第3四半期(正確なデータは12月12日に判明)に0.2%に減少、第 4 四半期にはさらに 0.4%の減少となるでしょう。2023年の第1-3四半期の下落は、それぞれ、0.4%、0.4%、 0.2%となる可能性があります。

    インフレについては、英銀の調査によるとイギリス国民のインフレ懸念がやや和らいでいます。エコノミストの予測によれば、第4四半期に10.9%でピークとなり、その後は下落となるでしょう。現在のレベルは、目標の2.0%の5倍以上です。また、イングランド銀行は、大きなリセッションの恐れがあるにもかかわらず、利上げの継続を迫られるでしょう。2023年第1四半期には英銀がさらに50bp、第2四半期には25bpを引き上げ、4.25%にすると予測されています。

    GBP/USDEUR/USDに同じく、9月末からドル安による上昇傾向を続けています。また、財政ミクロ危機の終焉やイングランド銀行の金融引き締め策により押し上げられ、イギリス国際市場に支えられています。GBP/USD は12月5日に1.2344の高値更新でしたが、それ以上は上がらず、来週の決定を見据えて、1.2260 水準で5日間の取引を終了しました。

    ドイツのコメルツ銀行のストラテジストは、現在の状況は一時的な一休止でしかなく、イギリス通貨への圧力が高まると予想しています。 “現在” “財政危機が収束したという安心感に支配され、エネルギー危機のさらなる悪化の兆候は見られません。私たちの考えでは、これはポンドにとって日休止にしか過ぎません。経済の見通しの悪化、比較的慎重な金融政策[…] と上昇を続ける高いインフレがポンドに大きな圧力をかけ続けています”と記述しています。

    直近の中央値予想では、EUR/USD の予想と全く同じ: アナリストの50% は強気、25% が弱気予想で残り25% が中立です。その一方で、中期予想では、やや異なってきます: ここでの弱気支持は10% 高い、85%。

    D1のトレンド系とオシレーター系の値もEUR/USDと同様: 全て100% が緑、オシレーター系の10%は買われ過ぎを示しています。

    このペアのサポートは、1.2210-1.2235、1.2150、 1.2085-1.2105、1.2030、1.1960、 1.1900、1.1800-1.1840、 1.1700-1.1720、 1.1475-1.1500、 1.1350、 1.1230、 1.1150、 1.1100。上昇すれば、1.2290-1.2310、1.2345、 1.2425-1.2450 、1.2575-1.2610、1.2750でレジスタンスに直面するでしょう。

    前述どおり、GDPの発表がある12月12日(月)はイギリスの経済関連のイベントとして今週の注目を集めるでしょう。失業率と賃金に関しては、翌日、消費者物価指数(CPI)は12月14日(水)、イギリスの小売売上高と購買担当者指数は12月16日(金)に明らかになります。特に重要なのは、イングランド銀行が金利決定をする12月15日です。

USD/JPY: 円を助けるもの

  • USD/JPY は、12月2日の先週の安値133.61 から137.85へやや上昇して 強力なサポート/レジスタンス圏内の 137.50 を若干上回りました。先週の終値の鐘は136.60で鳴りました。

    このペアは、引き続き、日米の金利の開き次第となるでしょう。FRBがややタカ派よりのままで、日銀が超ハト派であるなら、ドルが円に対して優位のままとなるでしょう。日本の財務省による11月10日のような新たな為替介入は、現在のレベルでは考えづらいように見えます。利上げは効果的ですが、日本銀行(日銀)は12月20日の会合で据え置きにする可能性が高いでしょう: マイナスレベルの-0.1%。金融政策の根本的な変更は、来年の4月8日後であることが予想されます。この日は、日銀の黒田東彦総裁が任期を終える日であり、より厳しい後任者に代わる可能性があります。確であるとは言えませんが。

    もう一つの望みとしては、中国経済の見通しの懸念の再浮上です。ING金融グループのエコノミストは、 “弱い成長率と債券利回りの明らかな低下” は、“円のような安全通貨にとって優位性を示し始めるに違いない” と考えており、このことが日本通貨をサポートすることになります。

    今後のアナリスト予想では、このペアの下落予想の弱気が50%と残りの 50%の立場です。 しかし、中期では、多くのアナリスト(60%)が、視線を下から上に移したドル高で145.00-150.00 圏内を予想しています。D1のオシレーター系では、このようになります: 90%が下向き、10%が上向きです。トレンド系では、 85%対15% で赤が優勢です。

    当面のサポートレベルは、136.00 圏内で、続いて、134.10-134.35、133.60、 131.25-131.70、129.60-130.00、 128.10-128.25、126.35、 125.00。レジスタンスは、137.50-137.70、 138.00-138.30、 139.00、139.50-139.75、140.60、142.25、143.75、145.30、146.85-147.00、148.45、149.45、150.00、 151.55。強気筋の目標は、上昇して152.00を上回って足場を固めることです。

    予定については、2022年第4四半期の大企業製造業のセンチメント指数である短観の発表が予定されている12月14日に注目です。そのほかの日本経済に関するマクロ統計は予定されていません。

暗号資産(仮想通貨): 暗号資産大虐殺後のクリスマスラリー

  • 前回のレビューのタイトルは、“暗号資産の冬に代わりクリプトゲドン” (アルマゲドンと同じで善と悪の決戦の時)でした。今は、別の“血なまぐさい”言葉があります: “暗号資産大虐殺”で、資本力第2位の仮想通貨取引所であるFTXの破産後に起きたことを特徴づけています。投資家は11月に、わずか1週間で101億6000万ドルを失いました。この危機がドミノのように多くの企業を崩壊させました。ブルームバーグの調査によると、回答者の94%が FTX の破綻に続いて、何年もの安易な融資がより厳しいビジネスと市場環境に取って代わって、さらなる混乱が続くと考えています。問題を複雑にしているのは、2015年から2022年の暗号資産への投資によって73%から81%の投資家が資金を失ったことです。これは、国際決済銀行(BIS)が実施した調査データで証明されています。

    現在のビットコインの価格は、$17,000 前後での調整、4時間足チャートのSMA100とSMA200の4時間チャートの値がほぼ一致しています。BTC/USDは、ここ数週間のドルの下落が下支えになっています。市場は、12月14日のFRBの金利決定を控えて動きがありません。そして、また、これは、前日に明らかになる米国のインフレデータによって左右されます。FOMC (連邦公開市場委員会) の経済予測も、ドルの推移に大きく影響することになります。

    Credible Crypto、Moustache、Dave the Waveなどの暗号資産コミュニティの楽観主義者は、このデータが市場のリスク選好にプラスの影響を及ぼし、クリスマスラリーがビットコインを$20,000に押し上げると予想しています。暗号資産コミュニティCoinMarketCapのメンバーによると、BTCは年末までに平均価格$19,788 での取引になるといいます。

    多くのテクニカル指標(MA、RSI、MACD、BBなど)を搭載しているラーニングマシンアルゴリズムPricePredictionsは $1,000 低い価格を示しています。この指標では、2022年12月31日にビットコインは、$18,797 になります。

    しかし、すべてがそれほどバラ色ではなく、確かなものでもありません。例えば、ブルームバーグ・インテリジェンスのシニアストラテジスト、マイク・マクグローン氏は、現在、暗号資産が底打ちする最終段階だと考えています。しかし、同氏は、この段階を乗り切るのは難しいと警告しています:“普通なら、市場はV字の底をつくるだけではありません。大きなボラタリティを伴った可能性は非常に厳しく、全ての投資家から資金を奪っていきます。”

    有名なトレーダーでアナリストのマイケル・ヴァン・デ・ポッペ氏によると、このペアは $19,000になるまでに、大きな困難に直面するといいます。強気筋は、重要なレジデンスレベル$17,400-17,600を突破して、$18,285 台になる必要があります。

    イーサリアムの価格について、ヴァン・デ・ポッペ氏は重要なサポートレベルは $1,200だと考えています。マイク・マクグローン氏も同意見です。同氏の計算では、ETH には現在の価格水準付近に強いサポートがあります。

    年末まで間もなくですが、その時、どの予想がより正確だったか判明するでしょう。それまでの間、このレビューの執筆時点(12月9日金曜日夕方)ですが、ETH/USD は、$1,260の取引で、BTC/USD - $17,100で取引されています。暗号資産市場の時価総額は、先週と変わらず、0.852 兆ドル (1 週間前は 0.859 兆ドル) です。Crypto Fear & Greed インデックスは、27から26ポイント、7日間で1ポイント下がり、恐怖ゾーンのままです。

    このレビューの最後に長期予想に関して一言あります。BluntzやKorinek_TradesといったTwitterで人気のアナリストは、BTC/USD が2023年第1四半期に$15,000 あるいは、さらに低い$12,000 の下落を除外していません。

    Standard Chartered のエコノミストが描く図は、さらに暗いものです。FTXの崩壊が暗号資産市場の雰囲気に影響を及ぼし続け、大手業界関係者の連鎖倒産が続き、将来的にデジタル資産の信用が損なわれると予想しています。そのため、ビットコインは2023年中に $5,000に下落する可能性があります。Standard Charteredのチーフストラテジスト、エリック・ロバートセン氏 がデジタルゴールドから現物のゴールドに投資家の関心が移り、貴金属価格が1トロイオンスあたり$2,250に上昇すると考えています。その一方で、ロバートセン氏は、このシナリオが予想ではなく、現在の市場コンセンサスから乖離している可能性を示唆しているに過ぎないと強調しています。

    ギャラクシーデジタルのマイク・ノボグラッツ氏は一番長い先を見据え、トンネルの出口の一筋の光を見ました。ブルームバーグTVのコメントで、同氏はビットコインの価格が$500,000になると予想したままです。しかし、同氏の見方では、マクロ経済状況の大きな変化とFRBの積極的な動きにより、ビットコインの目標達成には5年以上かかります。

 

NordFX Analytical Group

 

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